老化と食べる能力
口の中の老化
噛む能力の低下
・虫歯や歯周病で歯が抜けてしまうと噛む能力が大きく低下します。
・老化とともに噛むのに必要な咬筋(こうきん)という筋肉が弱ってしまいます。
その結果、柔らかい食品ばかり食べるようになり、糖質の摂取が増加する一方で、たんぱく質、カルシウムの摂取が不足しがちになります。
また、食物繊維の摂取量も減って、便秘にもなりやすくなります。
唾液の分泌量が低下
年齢とともに唾液の分泌が低下します。
唾液が少ないと噛んだり飲み込んだりすることが難しくなります。
また、口の中が乾燥して衛生状態が悪くなり、口内炎、舌炎、歯周病となり、そのための不快感、疼痛からも食事をとれなくなっていきます。
特に、舌炎が続くと味を感じるのに必要な味蕾が委縮して、味覚感覚が低下し、その結果、食欲も落ちてしまいます。
食道の老化
食物を飲み込むときに、食道に入らずに気管に入ってむせてしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいます。
食物が肺まで入れば肺炎となることもあり、寝たきりの高齢者ではしばしば重篤な事例も起こります。
アミノ酸などの不足から、全身の筋力の低下とともに食道下部の筋肉がゆるんでしまったり、食道の動きが悪くなったりします。
胃液や胃の内容物が食道に逆流することもあります。
逆流性食道炎から潰瘍ができると食道機能がいちじるしく悪くなります。
胃や腸の老化
胃
胃では老化によって胃酸分泌が低下し、病原体への抵抗力が低下します。
鉄やビタミン吸収能力も落ちてしまいます。
小腸
小腸では消化液を分泌する能力が低下し、消化吸収が悪くなります。
脂っこいものがあまり食べられなくなったり、また、牛乳を飲めなくなったりします。
大腸
大腸では運動低下によって便秘がちとなることが多くあります。
また、大腸壁の一部が小さな袋状に腸外に突出して憩室(けいしつ)を作り、感染を起こすこともあります。
肝臓
肝臓は老化の影響は受けにくいのですが、栄養素処理能力の低下やたんぱく質合成機能の低下がみられます。
これらの老化はアミノ酸の不足によってさらに早く進行します。
結論
噛む能力の維持、アミノ酸・カルシウムの摂取が健康を守る
老化によって食べる能力、消化吸収の機能が低下します。
食べる能力を守っていくためには、まず、噛む能力を維持することが大切です。
歯が抜け落ちる一番の原因である歯周病、そして虫歯を予防し、カルシウム不足に注意して丈夫な歯を高齢まで維持すること。よく噛んで飲み込んで、おいしく食べること。
そしてアミノ酸をしっかり取りながら積極的にからだを動かして、消化管の動きを良くすること。
そうすることで食べる能力を維持し、健康を守っていくことができます。
飲み込み力アップのトレーニング
1.舌を出して軽く噛みます
2.その状態でつばを飲み込みます
これで、筋肉が鍛えられます。お試しください。
歯医者さんが教えてくれた「薬と口の老化」の関係
加齢とともに唾液の分泌量は減りますが、さらに分泌量を減らしてしまうのがお薬です。
例えば、鼻水やくしゃみ抑えるお薬は、服用すると唾液の分泌も抑えてしまいます。
他にも胃腸薬や降圧剤、利尿剤、睡眠薬、鎮痛剤等、唾液の分泌量を減らしてしまうお薬は多いのです。
その結果、常に飴を持ち歩いて食べてしまうため、虫歯になる人が多いそうです。
しかも、飴の糖分は、なくなるまでに40分もかかるそうですので、食べすぎには注意しましょう。